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『4月9日《水》午前6時50分』




「未来、今日から高校生活始まるのでしょう。早く起きなさい」

母親が木目のらせん階段を上がり、僕の寝室のドアを右手でガチャリと開けた。

「おはよう、未来。朝よ、起きなさい」

母親が淡々とした口調で言い、寝室のカーテンを両手で開けたそれと同時に太陽の光がまぶしく目に当たり、僕は手で顔をおおった。

「………」

まだ少し僕がふとんの中でぐずぐずしていると、母親が「今日から、高校生活スタートするんでしょ。いつまでも寝てないで、早く起きなさい」と促すように言った。

母親はかけ布団を両手でつかんで放り投げ、僕の体を二回軽く揺らした。そして、さっそうと下に駆け下りた。

「ふぁ〜」

僕はまだ半分眠っている目を右手でこすりながら、シングルベッドからゆっくり起き上がった。

開けっ放しの寝室のドアを抜けて、短いろうかを歩く。そして白い壁に手をつきながら、ふらついた足取りで木目のらせん階段をゆっくりと下りた。