『父親が残した借金をひとりでお母さんは、夜な夜なスナックの仕事をして返済してたんだ!』

「うそ……」

私はしぼり出すような声で言った。

最近、母親が毎晩夜に出かけてお酒を飲んで朝帰りしていることに嫌気を感じて、私は大阪の実家を離れた。しかし、母親が仕事のためにお酒を飲んでることなんて知らなかった。

「私たちのためだったの………?」

私は、ふるえた声で訊いた。

『そうだよ』

はっきりとした口調で、翼はそう言った。

「そんな………」

私の声が、さらにふるえる。

私の頭の中に楽しかった母親との思い出が走馬灯のようにかけめぐり、勝手に家を飛び出した罪悪感が胸をしめつけられるような思いになる。