午前の講義と午後の講義を終えた私は、通っている大学を出た。

一日の講義が終わって私が帰宅するころには、冷たい雨が暗くなりつつある空からポツポツと振っていた。あたりは薄暗くなり、等間隔に設置された街灯が明かりを灯している。

「一緒に帰ろ、梢」

「えっ!」

背後から女性の声が聞こえ、私の頭上にオレンジ色の傘がかぶせられた。振り向くと、笑っている詩織の姿が目に映った。

「あ、ありがとう」

そう言いながら私は、ぎこちない笑みを浮かべた。

「いいって、梢」

詩織は目を細めて、やさしい口調で私に言った。

私は詩織に感謝しつつ、オレンジの傘に入った。傘にを叩く雨の音が、私の頭上から激しく聞こえる。