「い、いや………」

経験したこともない恐怖で一気に瞳に涙があふれ、持っていたスマートフォンがパタンと音を立てて床に落ちた。

ーーーーーープルプル!

そのとき落としたスマートフォンから呼び出し音がけたたましく鳴り響いた。

液晶画面には、山田優太に名前が表示されていた。

「こんな男よりも、僕の方が千春ちゃんを愛している。好きだよ、千春」

落ちたスマートフォンの画面の上に右足をぐっと乗せ、興奮した様子で私に近づく。その瞬間、私のスマートフォンからピキピキという音が聞こえ、液晶画面に傷が走った。

「誰か、助けて………」

私は恐怖に顔をゆがめ、ふるえた声を上げた。

私の瞳から、ひとすじの涙が頬を伝って流れていた。

「好きだ、千春」

斎藤が本名とは違う私の名前を口にして、一方的な愛情をぶつけた。

男性はひどく興奮しているのか、血走った目で私を見つめている。