六時三十分。私が大学から帰るころには、気象予報士が言っていたとおり、鈍色の雲から激しい雨が降っていた。私と同じ大学に通っている、学生たちが傘をさして家路につく姿が見える。私も傘をさして、自分の家に帰ろうとする。

「梢、ちょっと待って」

背後から声が聞こえて、私は後ろを振り返った。

「詩織」

私は瞳に映った、友人の名前を口にした。

「梢、今から帰るんでしょ」

「そうだけど‥‥‥」

私は、小さな声で答えた。

「じゃあ、途中まで一緒に帰ろう」

詩織が笑顔でそう言って、私に一歩近づいた。

「いいよ」

私は、小さな声で答えた。

私は途中の道まで、一緒に帰ることにした。薄暗い夜空から激しい雨が降り、舗装されたアスファルトを叩く。