江藤千隼、と言う名前を聞いて日万凛を伺う様に蒼生が視線を向ける。
 悪いことをしているわけでもないのだが、その視線に責められているような気がして俯いてしまう。
 「蒼生、そんな日万凛をガン見してるなよ。日万凛が怯える。」
 潤の一言を聞いて小さく「…悪い。」と蒼生は謝ってくる。
 それに対し日万凛は「ううん。ごめんね、本当に偶然なんだけどいい気分しないよね?でも隠している、と言うのもあおを裏切るみたいで嫌で…」と最後は尻すぼみになってしまったが日万凛の思う気持ちを伝える。

 「偶然にも日万凛が企画で外注している広告代理店に勤めてるらしくてね。俺と日万凛が待ち合わせした日、あの日は担当者の代わりに江藤千隼が来たらしいんだよ。」
 潤が後をつないでいく。それに対して蒼生は視線で続きをまた促す。
 「あの日は、俺と合流した後、早々に日万凛を引き離したぜ。なんとなく…うん。あんま良くねぇ気がするんだよなぁ。」
 最後の「あんま良くねぇ気がする」の発言に日万凛はドキっとした。
 なんとなく、確証は持てないけれど日万凛の中でこの再会が今回だけで済まない様な気がしたからだ。

 「…ふざけるな。潤、近くにいたんだろ、何してんだよ!!」なんで、今更出てくるんだよ…と最後は日万凛には聞こえなかったけれど、潤にはしっかり聞こえたみたいだ。
 「…気持ちはわかるけど、八つ当たりすんなよ。」
 「あ、悪い。」バツの悪い顔して潤に謝っている蒼生は少しの間、思いに耽っていた。
 「あのね、あお。確かに高校の頃に江藤くんと付き合ってはいたけど。今、私が付き合ってる人も、付き合いたい人もあおだけだよ。」