自室で一人呟く。
 「潤…デートじゃなかったのかな…そしてあお、そんなすぐにアポ取れるのかなぁ」
 とりあえず、二人が来てもいいように部屋片付けよう、と立ち上がった。

 潤と電話終えて小一時間経った。部屋の片付けも終わりひと心地ついた頃、時間を見計らったように玄関の鍵を開ける音が聞こえた。
 扉を開ける音と共に靴を脱ぐ音、カサカサとビニールが擦れる音がし、一人静まり返っていた部屋の中に色んな音が生まれる。

 「日万凛、ただいま〜」

 両手に買ったものをビニールに沢山詰め込んだ潤と、突然潤に呼び出され少し腑に落ちない顔をしている蒼生が部屋になだれ込んでくる。
 潤も蒼生も仕事帰りなのだろう。二人ともスーツ姿だ。

 潤は勝手知ったる日万凛の家でカウンターに買い物袋を置き、「日万凛、カウンターの袋、中身片付け頼んでいい?先にスーツ、シワになるから着替えてくる。蒼生、お前も着替え用意するからこっち来い!」と、蒼生を引き連れ別室へ消えていった。

 袋の中の物を片付け、酒の肴を簡単に作っていると着替え終わった二人がリビングに戻ってくる。潤も蒼生も準備に参加し、いよいよ宴会だ。

 潤も蒼生も手抜きもいいところの日万凛の料理を「美味い」と喜んで食べてくれる。そんな小さなことでも嬉しく感じる。
 蒼生は蒼生で「日万凛の料理、初めて食べた。」と少し照れ顔だ。
 その顔を見た潤が「蒼生、散々拗らせてきたからな。料理だけで喜び過ぎ。でもまぁ日万凛の料理は酒の肴も勿論、家庭料理も美味いけどな。」と、何故か得意顔だ。