エントランスのソファーで少し時間を潰し、時間五分前に受付に向かい社名を告げる。そこでクライアント側の窓口である結城にアポイントを取る。
 事前に椎名が代理を寄越すと連絡入れていたのであろう、すんなり六階にあるという企画部の会議室にと案内された。会議室には既に結城が待機していた。千隼を確認すると人の良さそうな笑みを浮かべ、名刺交換をする。

 「改めて…本日は椎名の代理で参りました江藤と申します。椎名の方からも話があったかと思いますが、次回撮影の絵コンテの修正いたしました。確認の方、よろしくお願いいたします。」
 名刺交換の後に、挨拶とともに椎名から託された絵コンテを渡すと、目の前に座っている結城はそれまでの笑顔を引っ込め、ジッとそれを凝視する。

 「…はい、前回お伝えした要望を組み込んでくださりありがとうございます。本日、普段同席しているものが不在でして。これで大丈夫だと思いますが、確認してから椎名さんにお返事する形で宜しいでしょうか。」
 それでお願いします、と返事をし、少し残念に思う。今日、田崎さんは席を外していた。

 代理の役目は早々に片付き、少しの雑談の後に千隼は会議室を後にした。
 企画部の会議室から出て真っ直ぐ直進するとエレベーターホールがある。少しの残念な気持ちを引きずりゆっくりその方向へ向かうと、前方エレベーターホールから人の声が聞こえた。
 女性と男性の声だ。