その事に気がついてしまって頬の緩みが戻らなくなってしまった日万凛に怪訝そうな顔をしている。
 なんだかわだかまりがなかった子供の頃に戻ったような二人の間の空気に日万凛は嬉しくなった。

 その後、駅近くに駐車していた蒼生の車に乗せられ、連れてこられたのはホテルに併設されているイタリアンレストランだった。

 「日万凛の企画した商品の発売、おめでとう。乾杯。」

 チンと小さくグラスを鳴らし乾杯するが、二人ともお酒は飲まず、お水である。蒼生は飲んでいいと言っていたけれど、日万凛が断ったのだ。
 蒼生は車の為、飲酒出来ないのに一人だけ飲むと言うのも寂しかったからだ。

 食事中の話の主役をもぎ取ったのは日万凛の企画商品の新発売でもなく、そのCMの話でもなく、何故か日万凛の弟、潤の話がメインだった。

 日万凛と弟の潤は年子ということもあってか、異性の姉弟だがとても仲が良い。定期的に二人で遊びに出掛ける程の仲だ。

 潤に彼女がいても最低、月イチ位の間隔で会っている。そして何かにつけて日万凛の家に泊まりに来たりもしている。