普段、仕事行くときはオフィスカジュアルで纏める服装。それをフェミニンに可愛らしく纏める。そして、それに合わせたメイクにし直す。
 姿見の前で服装を何度も前から横からと確認したり、メイクも直した後に変な所ないか何度も確認したり、気分は学生時代のデート前。そわそわ落ち着かない自分に苦笑しかない。

 ここまで日万凛の中の蒼生像が変わってしまうのか。ギクシャクしていた約十五年位の年月は、たったの二ヶ月ちょっとで覆された。
 そんな自身に複雑な気持ちはあるけれど、素直に会えるのを楽しもうと日万凛は思っている。

 テーブルの上に置いておいたスマホがバイブレーションでメッセージの着信を知らせる。相手は蒼生だ。
【今、駅に着いた。どこにいる?】
 相変わらず絵文字もなければスタンプもない、簡潔に纏めてあるメッセージ。
【一度家帰ったの。今から駅行くね!】
 というメッセージと共にクマのイラストでごめんと謝っているスタンプを押して、ちょっと可愛らしく。
 バッグを手に取り玄関へ向かおうとしたらもう一度、蒼生から【家まで迎えに行く】とメッセージ受信。
玄関で待機する事約五分、ピンポンとドアフォンが鳴る。画面に映るのは勿論、蒼生だ。
 ドアフォン越しに「今行くね」と伝え、日万凛は家を出た。

 「……来てもらっちゃってごめん。ありがとう。」

 家まで迎えに来てくれた蒼生に一言伝える。些細な事なのだが、とても嬉しかったのだ。
 その日万凛の言葉に対し、蒼生は「…別に。」とつれない態度ではあるけれど、纏ってる雰囲気は優しい。