そんな日万凛に泪は意地悪な質問をしてみる。
 「じゃぁ、日万凛はあの時、BARで神崎さんと会わなかった方が良かったと思うの?」
 そう切り出すと日万凛は「あの時、会えたから悩んでる。」と言う。
 悩んでいる、言うことは日万凛の心の中で神崎蒼生がいるスペースが確保されている事だろう。

 ただ過去のギクシャクした何年もの時間がたったの数ヶ月で覆された事実。
 これが日万凛に戸惑いを与えてる。

 もっと単純に今の気持ちで動けばいいのではないだろうか。
 そう泪が思ってしまうのは暗に蒼生の気持ちを知っているからなのだが。
 それでもこの二ヶ月ちょっとで日万凛の蒼生に対する気持ちが随分と角が取れている。
 日万凛の話にもあったけれど、蒼生は蒼生なりに素直になり、日万凛に歩み寄っている証拠なのだろうと思う。

 ただ、日万凛は蒼生の気持ちを何となく感じつつも、自身の気持ちも理解しつつも一歩が踏み出せない。そんなところであろう。
 恋愛に奥手な日万凛に一歩踏み出して欲しい。
 二人は想い合っているのだから。キッカケがあれば両想いになるのは時間の問題だと思う。

 そのキッカケに日万凛が気が付くか、そこが一番の不安どころだと泪は思う。
 蒼生から投げられるであろうキッカケと言う名のボールに、日万凛自身が気が付きキャッチしてくれれば、そこからはきっと蒼生が誘導してくれると泪は踏んでいる。