「まず、日万凛は神崎さんが気になるんだよね?恋愛的に。でも過去の記憶が邪魔をしてそれを認めたくない…と。」

 そう切り出すと日万凛は小さく頷く。
 簡潔に纏めると日万凛の気持ちはコレだ。好きだけれど、過去の記憶の所為で思いを拗らせてしまっている。
 好きという気持ちはシンプルな表現だと泪は思っている。けれども、大人になるにつれてシンプルな表現こそ難しい。

 それは泪自身もいろんなところで感じている。
 経験や知識がある分、大人になれば自尊心、虚栄心、様々なモノが邪魔をしてシンプルに気持ちを伝える事が出来なくなる。
 以前、BARの後で蒼生と電話で話した時にも、そして日万凛の気持ちを聞いた今も感じている。
 第三者からみてもそう感じる思いは、きっと当事者はもっと痛感しているであろう。

 「蒼生はBARで再会した後から優しくなったの。でもその優しさに裏があるんじゃないかって思うと怖い。」
 だから蒼生の言葉を真正面に受け止めるのが怖い。斜に構えてしまう。と日万凛は付け足した。