泪に蒼生の話を過去に何度もしたことがある。
 けれど、こんな顔から火が出そうな気分になる内容は二ヶ月以上前の慰労会後の件と今日で二度目だ。
 最近は蒼生が気になるのだ。恋愛的に。でもたった二ヶ月ちょっとで絆されてしまった自分が嫌で気持ちにブレーキが掛かる。
 もう蒼生の事が好きなのだ、認めざるを得ない事実。
 けれど、どうしても一歩踏み出せず立ち止まってしまっている。

 職場の食堂の窓側の一角で本日のおススメの目玉焼きハンバーグ定食をつつきながら、ポツリポツリと話し始める。
 ひとつひとつ自分の気持ちをなぞりながら確かめながら。
 あのBARでの再会後からの蒼生とのメッセージアプリや電話でのやり取り。その時に紡がれた蒼生からの言葉に対し、日万凛自身が感じたこと。戸惑ったこと。

 千隼と別れてから、恋愛はずっとお休みしていた。三十手前なのに日万凛はまだたった一人としか付き合ったことがない。今まで好きになった異性は蒼生と千隼の二人だけだ。年齢からしても経験値不足なのは否めない。
 日万凛は七月に二十八になった。二十八歳で、付き合った男性は一人。下手すれば女子高校生よりも恋愛経験ないのでは、と思う。