歩みの早い不破の少し後ろをやや小走りで付いて行き目的のBARへと向かう。不破が案内してくれたBARは会社から徒歩十分程度歩いた所にあった。
 会社を出て目の前の大通りを駅方面繁華街へと進み途中路地を入った所にひっそりと佇んでいた。
 木製の扉の前には三段しかない階段がある、そこが入り口。扉、階段共に目立った飾りはない。
 パッと見ただけではここが何のお店かわからない。何も考えずにその扉を見たらお店とも思えないかもしれない。

 ここがBARだとわかる唯一のものは扉のすぐ側にある’BAR cachtte(カシェトゥ)‘とある銅製のプレート。
 店内はカウンター七席、テーブル席は四卓。ここはお酒もだが、料理も美味しいとのことだ。
 二人はカウンター席に座った。
 入店後、不破に紹介されたのはマスターの東雲透(しののめとおる)、バーテンダーの榊健(さかきけん)。とても人当たりが良く、そしてとても聴き上手な二人だ。

 その中で一つ、面白い話をしてもらった。
 【カクテル言葉】だ。