高校卒業後、中堅の地元の大学に進学し、その後大手商社に就職したと蒼生は教えてくれた。そこは蒼生の母方の祖父が会長で、蒼生の母方の伯父が専務、蒼生の父親が常務として働いている。
 国内外に名が知れてる宝泉グループだ。
 因みにこの会社の社長は蒼生の祖父がまだ社長だった時、専務だった人物で全く神崎家とは関わり合いのない人だそうだ。ファミリー企業ではあるが、一族だからじゃあ役員ね、と安易に言うわけでもなくそこはちゃんと公正に人を見ているらしい。
 ファミリー企業は閉鎖的、そんな印象があったが、蒼生の一族は開かれたファミリー企業としても経済界では有名だそうだ。
 これは日万凛がネットでググって知ったことだ。

 縁故採用だと本人は言っていたが、それでも平社員からスタートして三十手前で役職持ちで課長だと言う。だから相当を努力しているのだろ。
 課長に昇進したのはつい最近のことらしいが、自身の会社でサブチーフからチーフにに漸くなれた日万凛からすれば、ただすごいの一言だった。
 しかもこのチーフに昇格も、カクテルの企画の為の発案者でリーダーだからせめて役職をチーフにしよう的なゆるい感じで上がったのだ。

 学生時代のサボってばかりだった蒼生しか知らない日万凛にとって、真摯に仕事に取り組んでいる蒼生、と言うのは何だか違和感感じてしまう。
 それだけ長い時間の蒼生と距離が空いていたんだろうと思う。
 一体何が蒼生を変えたのだろうか。