定時を少し過ぎてから日万凛はエントランスに向かうことができた。普段は日万凛よりも遅い時間までフロアに残って仕事している不破の方が今日はフロア出るのが早かった。
 不破はエントランスのソファーに足を組んで座って待っていた。

 「不破さん、お待たせしてしまい申し訳ありませんでした。」
 日万凛は小走りで不破の元へ向かい、開口一番に謝罪する。
 時間としては十分、十五分位の遅刻。少し遅れる旨は社内メールでも不破に伝えてはいたが日万凛の性格上謝らずにいられなかったのだ。
 終業後のプライベートの時間と言えども上司を待たせてしまった。日万凛は自身の要領の悪さに少し気分が沈む。
 不破は日万凛の遅刻に全く気分を害することもなく、日万凛を待っている最中に読んでいた経済新聞をカバンにしまい「さ、では事前学習に行くか。」と、立ち上がりエントランスへ向かい歩き始めた。