この状態をどうしようか。このまま帰る、と言うのがベターな選択なのであろうと蒼生は思いつつも日万凛の家から出られずにいた。
 このまま帰ってしまったら日万凛の連絡先を聞けない。家は結果的に知ることができた。だが、いくら幼馴染とはいえ何度もアポ無しで訪れるとか一歩間違ったらストーカー紛いの事はしたくはない。
 それはもうBARで充分だ。

 「………取り敢えず、起きるまではここに居るか。」

 もっと一緒にいたいし、連絡先をちゃんと知りたい。悩んでみたものの結局蒼生の中で導き出した答えはその二点。
 日万凛からの「帰るな(正確に言うと一緒にいたいだが)」と言質は取ってる、と言い訳もある。

 一人脳内会議の終わりが見えてきた頃、スーツ忍ばせていたスマホのバイブ音で一気に現実に戻る。こんな深夜に連絡入れてくるのは限られている。
 どうせ雅紀からだろう、と画面見たら珍しい人物からの着信だった。
 日万凛の年子の弟、田崎潤(たさき じゅん)からの電話。