「……なんで、こうなった。」

 暗がりの部屋で一人ごちる。
 蒼生の予定では家まで送り、新しい連絡先、携帯番号やメッセージアプリのIDをゲットしてまた徐々に距離を縮めていこうと思っていたが。想定外で、自身でも対日万凛に関してはヘタレだと自覚している蒼生はどう乗り越えればいいのかわからない状態に陥っている。

 現状はベッドに横になり完全に寝落ちしている日万凛。服も化粧も帰宅した直後のままの状態で。連絡先聞くどころか、世間話すらする間もなく、蒼生を引き止めるだけ引き止めて秒で寝落ちた。

 寝てる日万凛は起きている時より幼く見える。その寝顔は幼い頃の面影もあり懐かしくもあり、この数時間でここまで気持ちを許してくれたという安心感がある。

 だが蒼生にとっては据え膳食えずな状態だ。ずっとお預けしていたところに目の前にご馳走がある状態で過ごさなきゃいけないなど拷問でもある。
 それにやはり簡単に寝顔を見せられる、と言うのは男としてどうなのだろうか。そう思ったら複雑で仕方ない。