その間にコーヒーでも入れておいてやるから、と蒼生は再びキッチンの方へ向かい準備を始めた。
 腑に落ちない、そう思いながらも蒼生の言う事も最もだと思いシャワーを浴び軽く身支度を整える。
 誰かと一緒に朝を迎えたのはもう五年以上前の事。
 酔った上に甘えてしまいなし崩しの状態でだが、今こうやって蒼生と朝のひと時を過ごしている事に対し嫌に感じない、むしろ嬉しいと日万凛は思っている。

 部屋に戻ると蒼生は勝手に冷蔵庫を漁って軽食を作ってくれていた。
 昨日の今日で部屋に蒼生がいる事に馴染みすぎていてそれは如何なものだろうか?と、過ぎりつつも日万凛はこの現状を楽しもうと気持ちを切り替えた。
 再会してからの蒼生の纏う空気に棘が無くなり、一緒にいるこの空間が心地いいのだ。

 再会までの蒼生に対しての嫌悪感はこの時点でおもしろいくらい日万凛の中から消えていた。だが何故今更優しくするのだろうか、という新たな疑問が生まれてくる。