休憩中のふとした発言で次の仕事の方向が決まった。だがまだ日万凛の中では漠然としていて明確なビジョンが出来上がってない。
　日万凛は先程、自販機で買った飲みかけのペットボトルを握りしめ考えあぐねいていると不破が口を開けた。

　「田崎はBARには行ったことあるか？もし無いのであればこの企画にも繋がるし今晩にでも行ってみるか？」
　今日は金曜だしな、と付け加え不破は日万凛を飲みに誘う。

　日万凛にとってカクテルは居酒屋で出されれてるものしか知らない。
　それになんとなくBARは敷居が高く感じていた事もあり行ったことが無かった。
　不破の申し出に二つ返事で返し、その後の休憩は日万凛は不破にBARの事を聞いて過ごした。

　そうしているうちに手にしていたペットボトルも空になり自主休憩をそろそろ終わらせようとした時、一足先に不破が立ち上がった。
　飲み終えた缶コーヒーを休憩スペースに備え付けてあるゴミ箱に捨てながらまだ座っている日万凛の方を向いた。
　長身でスラッとした風貌でスーツが良く似合う。

　「さて、今日はこれから急ぎの案件だけ片付けて定時で上がるぞ。お前もだからな、田崎。終業後に一階エントランスで、遅れる場合は社内メール寄越せよ。」
　そう言い不破は颯爽と去って行った。