もっと単純に今の気持ちで動けばいいのではないだろうか。そう泪が思ってしまうのは暗に蒼生の気持ちを知っているからなのだが。
 それでもこの二ヶ月ちょっとで日万凛の蒼生に対する気持ちが随分と角が取れている。日万凛の話にもあったけれど、蒼生は蒼生なりに素直になり、日万凛に歩み寄っている証拠なのだろうと思う。

 ただ、日万凛は蒼生の気持ちを何となく感じつつも、自身の気持ちも理解しつつも一歩が踏み出せない。そんなところであろう。
 恋愛に奥手な日万凛に一歩踏み出して欲しい。二人は想い合っているのだから。キッカケがあれば両想いになるのは時間の問題だと思う。

 そのキッカケに日万凛が気が付くか、そこが一番の不安どころだと泪は思う。
 蒼生から投げられるであろうキッカケと言う名のボールに日万凛自身が気が付きキャッチしてくれれば、そこからはきっと蒼生が誘導してくれると泪は踏んでいる。

 日万凛情報ではあるけれど、蒼生は学生時代からそれなりに恋愛の場数は踏んでいるであろう。
 だが、日万凛は恋愛の経験が少ない。恋愛に多感な女性ならちょっとしたアプローチでも上手くキャッチする事が出来るかもしれないけれど、その能力を日万凛に求めるのは酷だ。

 蒼生からのキッカケ待ちの待機を日万凛にさせても、そのチャンスを見逃したり、ぐるぐる悩んで二の足を踏んでしまう状況が目に浮かぶ。
 結局、泪はそんな日万凛に「神崎さんの言葉をシンプルに受け取ってあげて。そして日万凛は自分の気持ちに素直になりなさい。」と伝えるに留めた。
 言葉で言うには単純な事だけれど、これがきっと一番難しい。けれどもこれが一番、二人が必要な事。

 「さて、じゃ、取り敢えず午後の仕事頑張ろう?後でまた話聞くから!」
 お昼も終わりに差し掛かったのでそう言い泪は席を立ち上がった。

……神崎さん、頑張って下さいっ!
日万凛は手強いですよ!!

 心の中で蒼生にメッセージを残したのはここだけの話。