職場の食堂の窓側の一角で本日のおススメの目玉焼きハンバーグ定食をつつきながら、ポツリポツリと話し始める。
 ひとつひとつ自分の気持ちをなぞりながら確かめながら。あのBARでの再会後からの蒼生とのSNSや電話でのやり取り。その時に紡がれた蒼生からの言葉に対し、日万凛自身が感じたこと。戸惑ったこと。

 千隼と別れてから、恋愛はずっとお休みしていた。三十手前なのに日万凛はまだたった一人としか付き合ったことがない。今まで好きになった異性は蒼生と千隼の二人だけだ。年齢からしても経験値不足なのは否めない。いいオンナみたいに蒼生の言動をあしらうなんて高度なスキルは日万凛には持ち合わせていない。
 学生時代のギスギスした状態の蒼生の言動なら、聞き流したり、あしらったり出来たであろう。けれど今の蒼生の態度は当時と百八十度違う。今、日万凛が持っている恋愛スキルではどうやっても上手く立ち回れないのだ。

 半分惚気に近いような、そんな日万凛の話を泪は本日の食堂の一押しメニュー酢豚定食を日万凛が話しやすいよう相槌打ったり、先を促しながら、そして時には脱線しながら食べている。
 「酢豚にパイナップルって最高だよねー」とか言っているが、日万凛は酢豚にパイナップルやポテトサラダにリンゴとかの果物は邪道だよな、と思っているので、その件はスルーする。

 一通り日万凛が近況を話し終わった頃、お茶を飲みながら二人で一息つく。
 食後のお茶は至福だな、とちょっと年配じみた事を思いながらボーっとしていると泪が「さて、それでは泪さんの恋愛カウンセリングといきましょうか!」と、口元に笑みを浮かべながら日万凛の気持ちを一つ一つ整理し始めた。