BARを出て、駅まで三人で向かっていたが雅紀は駅に着く手前で流しのタクシー捕まえて帰ってしまった。雅紀はこれから彼女の元へ行くそうだ。

 深夜の駅のロータリーへ向かう。
 二人で歩道を並んで歩くのはいつ振りだろうか?日万凛は記憶を遡ってみる。
 中一の最初の頃にあったか、その位だろうか。あの頃は然程二人の身長に差はなかった。
 あの頃と同じ、穏やかな雰囲気で過ごせてる今を日万凛は不思議な気分でいた。

 夏目さんとも約束したしな、と前置きしてから蒼生は「日万凛、家まで送る。最寄り、何処?」と聞いてきた。
 再会して数時間で二人きりという状況に日万凛は戸惑っている。思いがけない再会もだが、再会した当初より今、この時間の蒼生との空気は嫌じゃない。
 寧ろ心地よく感じていて、そんな自分に戸惑っている。

 ここで送り要らない、と突っぱねる事も出来るだろう。昔ならそうやって日万凛は突っぱねていた。
 でも今はもう少し蒼生と居たい、話したいと日万凛は感じている。
 そう思える位、BARでの時間は日万凛の中にあった蒼生像にいい変化が現れたのだ。雅紀の影響も大きいだろう。
 それだけでは無く、この数時間で当時の印象を覆す位の蒼生の態度、行動の変化があった。