うまく行かなくて凹んだ気分でカウンターに戻るとマスター、榊だけじゃなく雅紀までニヤニヤしている。どうやら一部始終見られていたらしい。
 「あーおーいちゃん♡今のはなにかな??」
 雅紀は面白いおもちゃを見つけたような、そんな表情だ。タチが悪い。
 そして「蒼生、なんでもっとうまく立ち回れないの?腕落ちた??あの子、うまくいけばお持ち帰りできたんじゃない?」とか吐かす。
 「だってあの子、お前の事ジッと見つめていたじゃん?ちょっと甘いセリフ言えば落とせたと思うけど。」
 可愛い子だったのに勿体ない、と雅紀はブツブツ言っている。

 これが日万凛相手じゃなかったらもっとスムーズに話しかけ、今隣に座って酒飲み始めていたかもしれない。
 日万凛だから、今迄培ってきた恋愛スキルを発揮出来ない。
 そんな俺らのやりとりを見てマスターがもう雅紀に隠すより、味方につけたほうがいいと判断したんだろう。さっきの件を聞いてきた。

 「蒼生。今、日万凛ちゃんに話しかけたのか?また会いたいならここで連絡先でも聞いておかなきゃもしかしたらここでもう会えなくなるかもだよ。」
 榊もマスターに続き口開く。
 「日万凛ちゃんたち、そろそろ帰ると思うよ。話すなら今の内だと俺も思う。」
 俺とマスター達の話を頭に?マーク浮かべながら聞いている雅紀に俺と日万凛の関係を簡単に説明すると、最近の俺の行動に合点がいったようだ。
 そして次の瞬間、何を思ったのか日万凛の席へ歩いて行った。

「日万凛ちゃん、だよね?」