「本来ならお客様の情報をむやみに話したりなんてしないけれど、さっきの別れ話の件もあるし日万凛ちゃんの事聞いてきた理由あるんだろう?よかったら話してくれるかい?」
 マスターのその言葉を聞いて蒼生は胸の中にあるモヤモヤを話し出した。
 日万凛は幼馴染と言うこと。
 日万凛の元彼は蒼生の当時の親友だったこと。
 きっかけを作ったのも蒼生であること。
 蒼生は当時、本当は日万凛が好きだったけれど、素直になれず、傷つけてしまい、その後十年近く音信不通だったこと。
 要は初恋を拗らせてる、と。
 そして不実にも女を切らした事ないが、日万凛を引き摺り続け思わぬここでの再会で想いが再燃した事。

 蒼生が日万凛を好きだなんて当時の親友である千隼にすら話したことないのに。
 なんでたまたま入ったBARのマスターに話しているんだろうか?
 そんな自分に苦笑してしまう。

 バーテンの榊が思い出した様に口を挟んだ。
 「そーいや日万凛ちゃん、幼馴染に元彼紹介されたって言ってたね。で、君がその幼馴染なんだね。名前は?」
日万凛の回想話に幼馴染と言うポジションでしか出れない事に残念な気持ちで榊に名を名乗った。
 その後、日万凛がどのくらいのペースでここで来るかと聞いた。
 まだ二回しか来た事がないとのことだが、来店した時は共に金曜だったらしい。