蒼生と雅紀は、大学で知り合って社会人になってお互い会社は違うが定期的に飲む間柄。
 それなりの付き合いがあるのに今日、初めて日万凛という幼馴染が居ると知ったという。しかも偶然にもこうやって飲む機会が出来て嬉しい、と日万凛とこうして会話する事を喜んでくれた。

 最初は適度に雅紀の言動に突っ込み入れていた蒼生だが、後半の方は殆ど言葉を発していなかった。
 何か考えているような、そんな雰囲気だ。「あお?」と日万凛が顔を覗き込みながら問いかけると榊に「日万凛ちゃん、今そうやって蒼生に話しかけるのは酷だよ」と言われ互いの顔が思いの外近付いていたことに気が付く。
 蒼生も「日万凛、近過ぎだから。」と顔を背ける。照れる蒼生の顔は、子供の頃と変わりがなくて日万凛は何だかんだ嬉しくなった。

 初めは妙な居心地の悪さを感じていた日万凛も時間が経つにつれ素直にこの久々の再会を楽しんでいた。
 直接、日万凛と蒼生が会話のやり取りをする、というのは少なかったけれど、それでも気不味い雰囲気にならなかったのは雅紀のお陰だ。
 雅紀は日万凛に対しても返答しやすいように質問をしてくれたり、話に置いていかれそうな時は然りげ無く会話に混ざらせてくれていたので飽きることが無かった。
 気が付いたら店内には日万凛達だけで、BARの閉店時間も間近の時間になっていた。