マスターは日万凛の前にスッとグラスを差し出す。
 「蒼生がもう日万凛ちゃんにお酒飲ませるなって言うから今日はもうソフトドリンクね。」
と、烏龍茶を置いてくれる。そして「蒼生ももう飲むのはやめな、日万凛ちゃん送ってくんだろ?」とさっきまで 飲んでいたグラスを回収され烏龍茶に差し替えられた。

 席をカウンターに移してからは雅紀が待ってたかのようにマシンガントークが炸裂。
 話の内容は、主に学生時代から今迄の日万凛の知らない蒼生の話だ。
 日万凛が知らない蒼生を雅紀から聞くのは楽しかった。

 雅紀が面白おかしく話してくれるというのも大きい。かなり誇張されているのもあるのだろうか、時々蒼生が『それは大袈裟だ。』とか『そんな事はない。』などテンポ良く突っ込んでいたりする。
 その様な蒼生を目の当たりにする事がなかった日万凛は少し驚く。

 子供の頃の蒼生ならまだしも、中高生の頃の蒼生はいつもツンツンしていて、どこか近寄り難い、そんな印象だった。
 近寄り難い印象が根強く残っていたので、そんの蒼生の素の差が垣間見れたような気がして嬉しくも感じた。