「……なんで、こうなった。」

暗がりの部屋で一人ごちる。
蒼生の予定では家まで送り、新しい連絡先をゲットしてまた徐々に距離を縮めていこうと思っていたが。想定外で、自身でも対日万凛に関してはヘタレだと自覚している蒼生はどう乗り越えればいいのかわからない状態に陥っている。

現状はベッドに横になり完全に寝落ちしている日万凛。服も化粧も帰宅した直後のままの状態で。連絡先聞くどころか、世間話すらする間もなく、蒼生を引き止めるだけ引き止めて秒で寝落ちた。

寝てる日万凛は起きている時より幼く見える。その寝顔は幼い頃の面影もあり懐かしくもあり、この数時間でここまで気持ちを許してくれたという安心感がある。

だが蒼生にとっては据え膳食えずな状態だ。ずっとお預けしていたところに目の前にご馳走がある状態で過ごさなきゃいけないなど拷問でもある。
それにやはり簡単に寝顔を見せられる、と言うのは男としてどうなのだろうか。そう思ったら複雑で仕方ない。

この状態をどうしようか。このまま帰る、と言うのがベターな選択なのであろうと蒼生は思いつつも日万凛の家から出られずにいた。
このまま帰ってしまったら日万凛の連絡先を聞けない。家は結果的に知ることができた。だが、いくら幼馴染とはいえ何度もアポ無しで訪れるとか一歩間違ったらストーカー紛いの事はしたくはない。
それはもうBARで充分だ。

「………取り敢えず、起きるまではここに居るか。」

もっと一緒にいたいし、連絡先をちゃんと知りたい。悩んでみたものの結局蒼生の中で導き出した答えはその二点。日万凛からの「帰るな(正確に言うと一緒にいたいだが)」と言質は取ってる、と言い訳もある。

一人脳内会議の終わりが見えてきた頃、スーツ忍ばせていたスマホのバイブ音で一気に現実に戻る。こんな深夜に連絡入れてくるのは限られている。
どうせ雅紀からだろう、と画面見たら珍しい人物からの着信だった。
日万凛の年子の弟、田崎潤からの電話。