「不破さん。ふと思ったんですけどビールや発泡酒、サワーはよくコンビニやスーパーでも見かけますけど、カクテルは余り多くはないですよね。もっとカクテル飲料あればいいのにと思うんですけど。」

 エアコンがガンガン効いている八月下旬。
 休憩スペースの一角。対面に座って缶コーヒーを飲みながら新聞読んでいる不破しのぶ(ふわし のぶ)。その不破に話しかけたのは不破の直属の部下で飲料メーカーマーケティング部所属、その中でもアルコール飲料の担当である田崎日万凛(たさき ひまり)、入社五年目の二十七歳。

 会社は国内飲料メーカー第二位のシェアを誇るスザクビバレッジ。朱雀ホールディングスの傘下の会社だ。
 都内に地上十階、地下二階の本社自社ビルを構え、支社も全国各地にあり、そして全国四ヶ所に生産工場を保有している。
 清涼飲料、アルコール飲料など飲料全般取り扱いがある。会社の推し商品アルコール関係であればはビール、発泡酒だ。他アルコール類で幅広く取り扱いあるのはサワー。ワイン、カクテル類は少しの取り扱いしかない。

 だが日万凛はビール、発泡酒は苦手だ。だから携わるのであるならば、それ以外がいいと思っている。
 現に新人研修時に行った人事に関する面談でも伝えていたのだが、何故アルコール飲料担当になったのか不思議である。