モダンな雰囲気のオーベルジュ。客室は全十室もない。料理は日本料理をベースの創作料理がウリだ。蒼生の選んだ宿は、観光地から少し車で移動したところにあった。
 午後三時がチェックインの時間なのだが、色々見て回っていたら、午後六時過ぎになっていた。 
 蒼生が事前に遅れるかも旨を連絡してくれていたのでスムーズにチェックインでき、午後七時に予約していたレストランでのディナー。
 この宿も、ディナーも日万凛は事前に知らされておらずサプライズだった。
 ディナーのデザートは二人で食べるのに丁度いいサイズのバースデーケーキ。チョコペンで「happy birthday ひまり」と書かれており、バースデープレートの前には飴細工でリングがあった。
 まるでバースデーケーキがジュエリーケースみたいに。飴細工のリングはシェンデリアの光を浴びてキラキラ輝いて見える。

 「日万凛、誕生日おめでとう。このケーキ見て俺がこれから何言いたいかわかるよな?」
 ここまでお膳立てされて解らない程、日万凛だって鈍感ではない。蒼生の言葉で、それが間違いではないと理解したら涙が出てきた。
 「…お前、まだ何も言ってねぇのに泣くなよ…」
 苦笑しながらそっと涙を拭いてくれる蒼生の手は温かく、そして優しかった。
 「日万凛、一生俺のモノになって?結婚するから。」
 
 びっくりして、そして嬉しくて涙は止まらないのに、蒼生の言い方に笑ってしまう。
 「…蒼生、決定事項なのね。…ふふっ。」
 なんだかおかしくなって笑いが止まらなくなってたら蒼生が少し拗ねたようにもう一度言い募る。
 「で、日万凛。俺の嫁になるんだよな。結婚するぞ。」
 どんなプロポーズだろうか。こんな傲慢な、俺様発言のプロポーズ。けれども、それがなんだか蒼生らしい。

 「…仕方ないから、蒼生のお嫁さんになってあげる。」