スマートフォン片手にあれやこれやと自問自答してる蒼生を苦笑しながら見守る。
 「服、いつ買いに行くか?金曜の仕事終わりにでも買いに行って外で夕飯食ってくか…そうしよう。あ、宿泊先はどうするか決めてたんだ…ヤバい俺、相当浮かれている。」
 途中、週末の過ごし方に話が行きどうなるかと思ったけれど元に戻った。
 「あお、ここの旅館て…」
 チラッとスマートフォンから見えた所に〔客室露天風呂付き〕とあり、おずおずと伺う。蒼生と旅行は行ってみたい。けれども、混浴は恥ずかしい。
 「ああ、この旅行で外せないのは客室露天風呂付きか貸切露天風呂ある所だな。混浴出来る温泉もあるけれど、他の男がお前と混浴するのが許せないからコレは必須。」
 ああ、必須なのか…。そっとため息をつく。
 日万凛の数少ない恋愛で、彼氏とお風呂に入ったというのはたった一度だ。日万凛が熱出した時に心配だから、と半ば無理やり一緒に入ったのが最初で最後。
 「蒼生と一緒にお風呂入るの、恥ずかしいからヤなんだけど…それはダメ?」
 以前の日万凛なら、自分の気持ち押し殺していただろう。嫌と伝えたとしても、拒絶に近い言い方になり下手したら喧嘩なんて展開だったかもしれない。
 「日万凛と一緒に入りたい。なんなら下心だってある。だから譲れない。」
 「えぇ、そこ開き直るの?蒼生、あの後からまた更に変わったね。」

 結局、旅行は日万凛が行きたかった地域で、蒼生の要望に沿った客室露天風呂付き宿となった。