「日万凛、来月の日万凛の誕生日がある週末の前後の金曜と月曜日って有休取れる?」
 そう蒼生に聞かれたのは六月の下旬のある水曜の夜のこと。
 いつもの様に蒼生の家に強制連行され、夕飯食べたの食器洗いが終わったところで、リビングからキッチンにいる日万凛に声掛けてきた。
 今年の日万凛の誕生日は金曜になる。その日から週末含め四連休取ってくれと言う事らしい。
 「…多分取れると思うよ。このカクテルカレシシリーズに関わってから有休取ってないなぁ。不破さんにも「フォローならするからいい加減有休取れ」って一昨日叱られたばっかりなの。」

 月曜の朝礼で、みんなの前で公開処刑されたのだ。「仕事を頑張ってくれるのは、会社にとっても、上司である俺にも助かる。けれども、しっかりと公休を取ることも、有休消化することも社会人にとっては大事なことだ!田崎!お前が一番有休取得率悪い。初めて大きな企画に携わり、気も急いでるだろうが、休みはしっかり取れ。」とタイムリーにお叱りを受けたのだ。
 「お前の上司は話がわかる人で良かったな。世の中、有休取ることを是としない会社もまだあるしな。」
 蒼生は「お前の定位置」とソファーとちょんちょんと叩き、日万凛を促す。ソファーに腰を下ろすと肩をグッと引き寄せられ、勢い余って頭が蒼生の胸元までグッと下がってしまう。
 すぐ側には、蒼生のスマートフォン。
 画面を見るのを躊躇って起きあがろうとしたら「いいから、スマホ見て?ここ、泊まりに行こう。」と旅行のお誘いだ。