「もう、ツライの。…振り回すなら別れてよ!!」
 思い切り力を込めて、蒼生を振り解こうとするが、蒼生はそれを難無く押さえ込み抱き込んできた。
 「…ふざけるな!俺がどんな気持ちでこの数ヶ月過ごしたか知らないで…」
 別れるとか、言うなよ…と抱きこむ両腕に力を込めて縋って来る。
 「どんな気持ち?そんなの、そんなのわかるわけないじゃない!!連絡はくれない、そうかと思ったら女の人と寄り添って街中歩いてたり、ホテルのレストランの個室でしょ!!」
 何も話してくれなかったのは、蒼生だ。

 確かに、日万凛自身も受け身すぎて踏み込めなかった所も悪い所だろう。普段抑え込んでいた気持ちが理性というストッパーが壊れ一気に蒼生へと攻撃していく。
 「勿論、思っていた事を言えなかった私にも非がある。だけど、私は怖かった。」
 涙と共に、日万凛の口からは次々と気持ちが溢れ出す。蒼生はその間、ずっと抱き締めたままだ。
 「そ…それにお嬢様、私の職場まで来たわ。蒼生を返せって、結婚するって。」
 だから、別れてあげるの。