「…日万凛、おはよう。」
 三度日万凛をゆっくり抱きしめながら声掛けると、緊張していた日万凛の身体が弛緩する。日万凛は緩やかに身体の向きを変え、ゆっくり身体を起こしながら細い声で蒼生の名前呼ぶ。
 「蒼生…」
 「日万凛、ごめん…」
 色々伝えたいことある、けれども一番最初に出た言葉は謝罪だった。
 寂しい想いさせて、ごめん。
 一人にさせてしまい、ごめん。
 だけど、日万凛を解放させてあげれなくて、ごめん。
 昨晩、寝落ちする前に思った事をもう一度、心の中でつぶやく。
 そして一番、話さなきゃならない事がある。先日のホテルのレストランでのバッティングの件だ。
 華蓮との件に関しては、何ら疚しい事はない。日万凛と再会する前に一時の関係以外、華蓮とは何もない。そもそも付き合ってきた時でさ、自分から抱きたくて抱いたわけではないから手抜きもいいところだった。
 
 蒼生には、ずっと日万凛だけだった。拗らせた挙句、手を放してしまった初恋を大事に胸の奥に仕舞い、一時だけの快楽は他で補う。
 想いと行動が真逆で、しかも日万凛にはとことんヘタレだ。これは日万凛と再会して、付き合えるようになってから初めて知った自分だ。
 全て気持ちを曝け出して、そして日万凛とより強固な関係になりたい。
 
 「日万凛、話聞いて。」