その場では引き下がった櫻小路親子だが、父親は分からないけれど、華蓮は諦めていなかったようで執拗に絡んでくるようになった。
 最初の頃はスマートフォンに連絡入れてくる位だったけれど、着信を無視して、尚且つ着信拒否にしたら今度は会社まで来て待ち伏せ。お陰で日万凛との時間が捻出できなくなった。
 華蓮の父親に直接クレームを入れ、華蓮に付き纏いをやめさせるように依頼したが、それも効果がない。
 三ヶ月ほど、一人で片を着けようと試みたがどれも功を奏すことがなく、一人で対処するのもほとほと疲れ果て、情けないけれども理一郎を始め、伯父に従兄弟に相談をした。
 外聞なんて、日万凛を手放す事より瑣事だ。それよりも味方をつけ一刻も早くこの華蓮から解放されたい一心だ。

 どうにか決着つける目処が立ったところで久々に蒼生は日万凛の家に向かった。
 時間は深夜三時。勿論、日万凛は寝ているだろう。潤から預かったままである合鍵を使ってそっと家に入る。
 日万凛の家は、温かい匂いがする。久々に蒼生は人心地付けた、そんな気がした。
 寝ているの日万凛を起こさないようにそっとベッドの空いているスペースに潜り込む。背を向けている日万凛を後ろから包み込むように抱きしめる。
 抱き込んだことで身じろぎした日万凛に小さく呟く。
 「日万凛、ごめん。」
 寂しい想いさせて、ごめん。
 一人にさせてしまい、ごめん。
 だけど、日万凛を解放させてあげれなくて、ごめん。
 だが、もうそろそろ決着つくから。そうしたら思う存分に日万凛を甘やかそう、いや、甘やかして今のこの凝り固まってしまった日万凛の心をまた一から解そう。
 そう新たに決心をし、蒼生も眠りについた。