この様な状態になったのは、蒼生の元に花蓮が再び現れたからだ。二月頭のある日、会社に華蓮が親と共に来た。
 その日、常務である父、神崎理一郎(かんざき りいちろう)に呼ばれ執務室へ向かった。そこでの再会である。
 桜物産の社長である、華蓮の父からの…政略結婚の打診だった。
 その場で蒼生は日万凛のことを伝えた。結婚したい女がいる、と。蒼生の父親は蒼生の拗らせた初恋を同じ会社に勤めている従兄弟どもから聞いていたらしく、日万凛との今の関係を場所を弁えずに大喜びした。
 幼い頃から神崎家と田崎家は家族ぐるみの付き合いがあり、幼い頃からよく母桃子に「蒼生と日万凛ちゃんが結婚すれば可愛い娘ができるね!うちは奏多(かなた)に蒼生と、男だけだったし。」と言っていたくらいお気に入りだ。

 それに真っ赤な顔をしたのは櫻小路親子だ。とりあえずお試しで数回会ってやってくれ、とやたら必死に喰らい付いてくる。勿論、蒼生の恋が成就したと知った理一郎はその場で断った。
 蒼生の両親も祖父母も恋愛結婚をし、政略結婚には否定的である。宝泉グループは政略結婚しなければならない状態ではない。
  そもそも蒼生は現会長の祖父の孫ではあるが、外孫だ。笹川には専務である伯父の長男、笹川真弘(ささかわまひろ)、次男の秋夜(しゅうや)がいるので、仮に政略結婚するなら真弘や秋夜の方がいいのだ。これに関しては二人とも既に既婚なので土台無理な話になるけれど。