蒼生の婚約者と名乗る女性が半月近く前に会社近くに現れてから、益々日万凛は気分が沈みがちになった。
 蒼生と会いたい、話したい、そう思う気持ちはある。けれども、もしその場で別れ話が出たらと思うと一歩が出ず、ただただ連絡を待つばかり。
 表面上は取り繕っていても、分かる人には分かる気の落ち様で、潤や泪は日万凛と話す時にいつも何か言いたげな顔をする。

 こんな時は仕事にでも打ち込んで、私生活の時間を減らしたい。けれども今、仕事の方は第三弾カルーアミルクの販売開始。このシリーズ初のミルク系のラインナップに売上に不安はあったけれど、今の所は順調に予定数値を超えてくれている。
 次の第四弾スクリュードライバーはもう開発の方は進み、六月下旬の発売に間に合うように準備期間。そして、その間にやるべきラベルのデザインや販促物、CMの打ち合わせが終わり、販促物は各店舗にまわす分を今作成している段階なのでもう日万凛の手から殆ど離れている。CM撮影に関しては、既に撮影も始まっているのでスケジュール等の問題が発生しなければこのまま特に打ち合わせ等せず大丈夫。

 スクリュードライバーの後に発売予定の第五弾ソルティードッグの開発の方も指針は決まっている。
 こちらはまだ開発部が指針を元に味のブラッシュアップを図っている段階だ。
 日万凛が今、手を出すところではない。もう少ししたらこちらも開発部が作ったソルティードッグから最高の味を選ぶ試飲等する段階に入るけれど、今は運が悪く、時間を少し持て余してしまっている状態だ。