日万凛が風邪で寝込んでから、既に二ヶ月以上経った。最初の一ヶ月の前半は少しの間だけでも会いに来てくれた蒼生が、後半になったらメッセージのみになった。
 一ヶ月半位までは数日に一度は日万凛を気にするメッセージを寄越してくれていた。けれども、二ヶ月目過ぎたくらいからは蒼生はメッセージも寄越さなくなった。
 日万凛はその間、何度もメッセージを打ち込んでは、消す。それを繰り返し蒼生に想いをぶつけられないでいた。
 この二ヶ月で日万凛の心は素直になる事より、再び感情を押し殺すことが多くなっていった。

 その日は、仕事で帰宅時間が遅くなった。時刻は既に夜の十時をゆうに過ぎている。定時は午後六時だから、四時間以上の残業だ。
 日万凛の会社は最寄り駅まで徒歩十分程かかる。オフィス街だから通勤ラッシュ時は沢山の人で溢れているけれど、ラッシュ時を過ぎてしまうと歩行者はまばらになる。

 駅までもう少し、と言うところで最近見慣れた後ろ姿を見て、胸が高鳴る。蒼生がいる。
 けれども、蒼生の隣には、スラッとしたキレイに着飾っている女性も一緒だ。遠目から見ても二人はお似合いで、日万凛の胸にズキリと痛みが走る。