だが、このバレンタインの後から蒼生の行動、態度がおかしくなっていく。
　この時期から、関係がギクシャクし始めてきた。
　相変わらず、蒼生は自身に少しでも時間が出来ると日万凛の元は来ては一緒に過ごす時間を捻出する。
　それこそは愛されていると日万凛も感じたりするけれど、一つ薄く頑丈な壁がそびえ立っているような、心の距離感を感じる。

　そしてイラつくことも多くなっている。少しの時間だけでも日万凛の家にいる時に、蒼生のスマートフォンに着信が入る。その着信を忌々しく思っているようだ。
　「電話、出ていいよ？」と声掛けると特に苛つきを見せるが、けれども誰から掛かってきているのかは一切話してくれない。

　全て話して欲しい。そこまでは言わない。けれども折角の二人でいる時に、その着信の所為で二人の空気がギクシャクするのだ。
　「気にするな」と言うなら、気にするような態度でいないで欲しい。勇気振り絞ってそう伝えれば、イラついたまま怒って帰宅してしまった。