「取り敢えず落ち着くまではウチで面倒みるから、見舞い来るなら俺ん家に来いよ。後で住所おくるから。」

 『見舞いに行けるかわからねーけど、一応教えておいて。じゃ明日も仕事だし、安心したら眠くなった電話切るわ。』

 そう言って蒼生が答える前に潤は電話を切った。そのままメッセージで住所を送り、再び蒼生は仕事をする。もうすぐ、資料作成も終わる。これが終われば少し蒼生の仕事は落ち着くのだ。
 ふと書斎のデスクの引き出しの中身を思い出す。日万凛に渡そうと思って密かに購入してあるエンゲージリングがそこにはある。

 「早く、これ渡してプロポーズして…名実共に俺のものにしたいなぁ…」

 それには、もっと日万凛に頼られるように、それこそ弟の潤よりも頼られるように。拗らせまくった初恋はマイナスからスタートしてようやくゼロに戻った。 
 だが焦ってまた日万凛の気持ちを置いていくわけにはいかない。着実にそして確実に、一歩一歩今よりも二人の未来を確実にするために。

 蒼生は残った作業を片付ける。