日万凛のアパート前に着き、潤が月極で借りている駐車場に車を停める。不謹慎にも少しドキドキしながら、けれども音を立てずにそっと玄関を開ける。
 リビングにあるテレビは視聴者不在の状態で映し出されている。カウンターにはコップと体温計のケースが乱雑に置いてある。
 カウンターに置いてあったコップをシンクに置き、体温計のケースは一旦、無くさないように目立つリビングのテーブルに置く。
 開いたスペースに買い物袋を置き、中身を冷蔵庫へしまっておく。

 そしてシンクに置いてあった食器を洗い終え、熱さまシートのジェルとスポーツドリンク片手に奥のベッドルームを覗く。暗がりの部屋で、ベッドに丸くなって寝ている。呼吸が荒い。

 「…日万凛。」

 潤が連絡くれたお蔭で日万凛が体調不良なのは分かった。けれども、その助けを求める第一報が自分じゃなく潤だったのが少し、悔しい。
 寝返りで仰向けになったタイミングでシートから外し、狭いおでこに熱さまシートを貼る。潤が「日万凛はオデコが狭いから子供用のサイズで」と、言っていたが子供用のサイズでもまぶたギリギリである。

 その後、シート貼り付けた冷たさで目が醒めた日万凛。渋っていた病院も無理に連れて行き、そのまま日万凛のアパートではなく蒼生のマンションに連れ帰ってきた。