だが、日万凛がその問いを答える前に、蒼生はスッと立ち上がった。湯槽に波が立つ。背中にあった温かな蒼生の温もりがなくなり、蒼生を目で追う。少し心細い。
 「そんな顔、すんなよ…。可愛すぎる。なんか、今物凄い潤のシスコンの理由が分かった気がする。」
 先に上がってる、日万凛も湯冷めしない様に上がれよ。と蒼生は浴室を後にした。
 浴室はまだ蒼生が立ち上がった時に出来た浴槽の中の波がちゃぷちゃぷと小さい音を立てている。

 一人浴室に取り残され、日万凛はこの浴室で交わした蒼生のセリフを反芻する。
 この甘々はなんだろうか。大切にされているとジワジワ心に染み込んでくる。
 心臓がこれでもかと言う位にドキドキと波打っていて、今にも飛び出しそうだ。
 「〜〜〜蒼生の、バカ。」
 小声で脱衣所で着替えている蒼生に悪態をつく。

 大事にされて嬉しくて仕方ないのに、素直ではない日万凛の口からは可愛げない言葉しか出てこない。
 「……大好き。」
 更に小さい声で想いを紡ぐ。着替えている蒼生には聞こえてないはずだ。
 「日万凛、俺も大好きだ。」
 聞こえてたのか、それともたまたま偶然なのか。
 浴室と脱衣所の間のガラス越しに告げられた蒼生の告白に日万凛はまた顔を赤くするのであった。