「…日万凛?」

 おでこに冷たいジェル状な物を当てられたことによって意識が浮上する。
 目をゆっくり開けるとそこには蒼生がいた。熱さまシートジェルを貼ってくれたようだ。
 東側に向いていた太陽も、寝ている間に西側のかなり低い位置になっていてほぼ昼間いっぱい寝て過ごしていたらしい。

 「…日万凛、なんで潤に連絡入れるの?」

 そっと日万凛の身体を起こし、クッションで上半身を安定させてからスポーツドリンクのペットボトルを口元につけてくる。促されるまま、日万凛は二口、三口と飲む。ジワリと冷たいスポーツドリンクが喉を潤してくれる。 
 ペットボトルを手渡された日万凛はゴクゴクと音を立てて飲む。日万凛が思っている以上相当、喉が渇いてた。

 そしてまだボーとする頭で寝る前の行動を思い巡らす。寝る前、潤に連絡した。そこから返信は来たのだろうか。確認した記憶すらない。

 「あ…お?」

 蒼生の言葉から察するに、潤が蒼生に連絡入れてくれたのであろうか。蒼生はベッドに腰掛け心配そうに日万凛を見つめている。
 何故かその蒼生の表情見ていたらホッとして目頭が熱くなってきた。体調悪い時は人の心も弱る物なのだな、と頭の片隅で他人事に考えながら自分もしっかり心が弱くなっていて、そのことに関して苦笑してしまう。

 泣きそうな目をしながら苦笑を浮かべている日万凛を見て、蒼生も苦笑する。
 きっと蒼生には日万凛が今思っていることが手に取るようにわかるのだろう。大丈夫だと言うようにそっと頭を撫でられ、思わず蒼生にしがみついた。

 「…日万凛、お前まだ身体熱い。熱測ってみて高かったら夜間に行くぞ。」

 甘え下手の日万凛の精一杯をちゃんと受け止めながら、そして最大限に心配してくれ、頼れるる蒼生の存在がありがたい。
 蒼生に促されベッドサイドに置いてあった体温計で検温してみる。半日寝ていたがまだ体温は三十九度あった。蒼生に内緒にしようと思ったが、あっという間に日万凛の手から体温計を奪い眉を潜める。

 「あお、病院…行かなきゃダメ?」

 出来れば動きたくない日万凛はダメ元でお伺い立ててみたが、その後夜間診療の時間を待って病院に連れて行かれた。
 風邪とごく軽い脱水症状。疲れが溜まっていたせいで熱が出て、発熱しているのにもかかわらずロクに水分補給をしていなかったからだ。
 点滴を打ってもらい、薬をもらい帰宅したら夜八時過ぎに病院に行ったのにも関わらず既に日が変わる直前だった。ただ、帰宅したのは日万凛の家ではなく蒼生の家だが。