身体が怠い。朝起きたら身体が重く節々が痛い。
 重い身体を起こして薬をストックしてある引き出しから体温計を出して検温してみる。
 冬真っ只中の一月下旬、普段であれば布団から一度出ると寒くて鳥肌が立つ所だが、ひんやりしている部屋が心地よく感じる。
 そうとう熱があるのかもしれない。
 無音の部屋の中でピピッと電子音が鳴る。体温計の計測が終わったようだ。
 
「…三十八度七分…か。」
 道理で身体が辛いわけだ。熱なんていつぶりだろうか、記憶を少し遡ってみても思い出せない位の昔に出たのが最後だ。週末は療養で終わってしまいそう、そう思うと少し残念だ。

 ここ一、二週間は激動だった。
 CM撮影の方で主演務めている和泉が一悶着起こしたのだ。ストーリー形式のCMで和泉の彼女役に抜擢されたのは最近、頭角を表してきたモデルだ。
 この彼女が打ち合わせの初日から遅刻するわ、撮影スタッフや日万凛たちにも悪態をつく。そのクセ、色恋にばかりに走り、撮影の合間だろうが和泉にモーションをかける。

 最初はきっと和泉も我慢していたのだろう。今回はこのモデルのマネージャーのスケジュール管理のミスで一日で終わらす予定の一本目のCM撮影が日を置いて二日に分けてとなった。
 撮影中は何度もNGを出し、空気を悪くし、反省するわけでもない。仕事は十二分に熟せないのに和泉をデートに誘っていた。それに対し、和泉がモデルをクビにしたのだ。