そして、今も。情けない事に日万凛に感情を振り回されている。他の男が傍に居るし、そいつに余裕無いところを見せるのも癪に障る。
 他人が聞いたら下らない、と思うかもしれない。たったそんな事で、と。

 だからそのまま気が付かない振りしてやり過ごそう。そう思ってるのに…
 目は素直に日万凛を追っている。思考とは裏腹に身体は素直と言うか…日万凛に向かって歩き始めていた。
 「あれ?お前…」
 遠目から分かってたクセにさり気なさを装う。内心の焦りや不安を隠す。

 「…!あ、蒼生!!今仕事帰り?」

 お疲れ様!と笑顔で声掛けてくる日万凛。
 日万凛の隣を見ると蒼生に明らか敵意を向けてる男の視線…コイツは日万凛が好きだと分かる。なんとなく、この男は厄介だと思う。

 そう、見た目と雰囲気で相手の男を査定していたら行動に移してきた。
 日万凛の隣にいた男は『先輩!この後、ご飯食べに行きましょうよ!ほら、もう今日は打ち合わせ終わりましたし…』と微笑みながらディナーに誘い始めた。蒼生に対し喧嘩を売っている様な視線だ。
 (後輩のクセに……人の女を誘うなよ、クソが!)
 今にも日万凛をその場から連れ出したいと思うが……
 拗らせ過ぎた蒼生の初恋は蒼生を臆病にさせたままだ。