「本当ね!あんだけ何度も「違います!弟なんです!」と言っても信じて貰えないって…まぁ、潤くんのエスコートの仕方がなぁ…アレじゃ仕方ない。」
 そうなのだ。潤は時々、仕事帰りに迎えにきては、まるで恋人をエスコートするみたいに寄り添い、腰に腕を回し抱き寄せる。時々耳元で囁いてきたりするからまたタチ悪いのだ。
 本人に問い詰めたら「これは日万凛に悪い虫付かない様に殺虫しているんだよ。」と言っていた。


 「殺虫剤の役目なんてしなくていいのになぁ。潤は昔から過保護でどっちが年上なのだか分からなくなる時があるんだよね。でもダイスキだけど。」
 結局、そのような潤の行動を黙認している日万凛も充分ブラコンなのだな、と自分の発言を思い返しながら笑ってしまう。

 ふと時計を見ると既にカフェに入ってから三十分経っていた。
 そろそろ社を出て、訪問先に向かわなければならない。今回の訪問は、結城と行くことになっていた。泪とはこのカフェでお別れ。今日はこのまま訪問先から直帰する事になっている。
 泪も時間を確認したのであろう「結城くんとはどこで待ち合わせ?いいよ、ここ片付けておくから!」と、話してきたので「結城くんとはエントランスで待ち合わせなの。そろそろ待ち合わせ時間だし、向かうね。何かあったら不破さんの指示に。私も移動中の電車以外では携帯極力出るようにするから!」そう伝え、泪に後片付けを任せる。

 「じゃぁ、泪。いってくるね!!」

 右肩にバッグを抱え、日万凛はカフェを立ち去った。これから結城と電車移動で訪問だ。結城を待っている間、これからの順序を脳内にてシュミレーションする。
 今日は金曜。明日は休みだ。普段は蒼生から事前に連絡がありデートをするのだが、前日まで連絡はなかった。だからこちらから連絡してみよう。