千隼と会社で再び対面した夜。月曜にも関わらず夜遅くに蒼生が家まで来た。
 日万凛も会いたいと思っていたから来てくれた事が嬉しく、年甲斐もなく『今から家に行く』と味も素っ気のないメッセージですらウキウキしてしまい今に至る。

 想いが通じてから約一ヶ月。けれどもこうやって二人きりで会うのは蒼生と両想いになったその一ヶ月振りなのだ。
 メッセージ届いてから約二時間後の夜の十時半過ぎに蒼生は到着した。

 一度持宅へと帰ったのであろう。ラフな格好にスーツを持参してビジネスバッグとは別にボストンバッグも持ち込んできた。
 思いの外の大荷物に戸惑っていると「いくら弟でも潤の服がお前の家にあるってムカつく。だから俺の服も置かせろ。」とちょっとよく分からない事を言っているが素直に頷いておこう。

 人心地着いてから「今日、アイツ来た?お前になんか言ってきた?」早速切り出して来た辺り気にしていたんだろう。「来たよ。で、仕事終わった後に話したいって言われたけど。断った。彼氏いるからって」人の顔を伺いながら発言することの多い日万凛が千隼の会いたいと言う言葉を蹴るのはとても勇気がいった。

 そして、それを蒼生に伝えるのはもっともっと緊張した。
 昔の蒼生なら舌打ちでもされていたかもしれない。けれども今の蒼生は不機嫌そうな顔をしつつも日万凛の頭を撫で「頑張ってくれてありがとな。」とだけ伝えてきた。

 二人でリビングのソファーに凭れ掛かり、テレビの音声をBGMに話す。ぽつり、ぽつりと話しては暫くの静寂。お互いお喋りな方ではないので会話と会話の合間が空く。けれどもその間ですら居心地がいい。
 不思議だ。何度も思う。嫌悪していた時期は一体なんだったんだろうか。再会してから何度も何度も塗り替えられていく。