97作品より

3.幸せと不幸
16.思っちゃった
21.良いんだ
22.時の流れに思うこと
30.思い込みと決め付けは事実ではない
31.地道だけど大切
32.自分の意志で
33.他人の為には自分を変える
36.つまり私が君といたいだけ
37.消えない罪と受けられない罰
39.操り人形から人間に
41.三段活用
45.オレオレ詐欺
49.人生は有意義に
52.重要なのは
54.1億円あげます
66.それはきっと君だから
67.Q & A
70.実現不可能な現実
80.暗中模索
85.夢は夢のまま終わる事が多い
89.子供から大人になった証拠かもしれない
91.その時の為に
92.一見複雑に見えても
95.どんなに難しくても
97.誰がなんと言おうと
101.強がりの本音
102.まだ子供の立場だけど
103.結局のところ
104.存在証明
109.探求は迷宮されど答えは単純
110.鏡花水月上映中
112.行動は同じでも意味が違う
119.手を当てること
120.切り捨てるか共に行くか
121.ひねくれた心の素直な願い
125.賽は投げられた
137.ノンストップで
138.涙は無色透明じゃない
139.疑心暗鬼

140.だからそれ以外は悪
141.不完全犯罪
143.理由は不明だけど根拠は明確
145.言葉より態度
146.結末なんてくそくらえ
148.飛んでいけ
154.バットエンドかリセットか
158.それでも求める、イミテーションラブ
160.花に込められた意味
171.エモーションモンタージュ
177.852+554~その男、社会死状態につき警察官要請~俺がいたから
179.派手な死闘と静かな戦略
196.世の中そんなに甘くないさ
205.価値はあっても値段はない
215.0円はタダって事じゃない
216.伏せ目から見据える目へ
217.ただし、傍観者でもいられない
220.誰も知らない、誰も分からない
221.幸福二乗
224.非効率だって時には有益だ
225.絶望が教えてくれていた希望
241.偽りの逃避行、鍵を握るはモールス信号
246.嬉しい誤算
249.独り立つ大地に広がるのは屍でも惨劇でもなく「無」だった
250.微睡みは底無し沼
261.最初から分かっていた解答
265.生が地獄で死が天国なのか
268.矛先さえ無くして
284.原因も解決法も僕ならば
285.変化は幸か不幸か

287.フロンティアチョイス
288.証明には証拠が必要不可欠
291.全ての物事において
297.もどかしいくてもあたっかくなれる
308.そして世界はサヨナラを告げた
315.ブラックホールが笑う
316.甘い蜜(テトロドトキシン)
323.呼吸困難、認識したって止まらない
325.ナニカの意思によって
328.嘘を付く程でも無い、ただほんの少し事実を歪ませる、それだけ
329.招かれざる○○
330.赤色灯が光だった
335.知っていることが良いって訳じゃ無かった
339.演者も観客も置き去りに舞台は続く
344.私の周りだけを避ける様にして、狂喜に満ちた黒いモノと穢らわしい赤い液体が蔓延している
345.全て知ることは出来なくても
346.鼻持ちならないのは結局全てだった
349.表裏蝉時雨
350.向こう側から絡め取られてしまうのならば
351.無が希
357.上下と前後と左右
358.見るだけの夢はいつか夢に喰われる
360.独りじゃなくて、1人だから
361.相変わらずはどちらか
362.私の上には何も無い
364.犯人に分からない様に結構必死だったんだけどな

365.一緒にいて悪夢を見るか、守られて正夢を演じるか





以上、97作品。

「運命の出会いちゅーんは、ぜーんぜんドラマチックやないんやなぁ。」

古くから天下の台所と呼ばれ、商業の街として名高い大阪府下に小さくも店を構える

喫茶、妃翠(ヒスイ)。


緩やかな時間が流れるアンティーク調の店内に、似つかわしくない声が響く。

「隗赫鰍掩っ!!今日こそ貸金業法違反で逮捕してやるからな!」


とあるお客を指差しながら怒鳴るこの男―――藹革殊犂(アイカワ コトリ)は、東京から1年前、西広(セイコウ)警察署、生活安全課へ赴任して来た警察官である。



「毎日毎日、よう頑張るなぁー。愛くるしくて可愛ええ可愛ええ、ことりちゃんは。」



「その呼び方はやめろ。ちゃん付けもするな、この下僕が。」

「おぉーこわっ。」



名前をもじって、『ことりちゃん』と小バカにする男―――淦鉞涓畤壟(カンエツ ケンシロウ)は、殊犂の怒りのこもった目線に震える仕草をするも顔は笑っており、言葉とは裏腹に全く怖がってはいない。



「藹革はん。被害届も出てへんのに、逮捕は出来ひんでしょう。そんくらいも分かれへんのですか?」



殊犂から名指しされるも冷静に返す男―――隗赫鰍掩(カワシゼキ シュウエン)は、この大阪で貸金業を営む、絆栄(バンエイ)商事に勤めている。

「被害届?そんなもの、貴様達が怖くて出せないに決まっているだろう。悪徳ヤミ金が。」


「金に困っとる人に貸して、何が悪いんか分かりまへんなぁ。みな喜んで借りていきまっせ。」



「貸すのは大いに結構だ。金利がトイチじゃなければの話だがな。」



絆栄商事は表向き一般的な金融会社なのだが、一部の借り主に対して金利がトイチ(10日で1割の利息)である為、殊犂の言う通り貸金業法違反に当たる。



ただ、西広警察署……ひいては大阪府警の職員からもその行為は黙認されている。


何故なら。



「なんや。かしゅーに、ことりちゃん。またやっとんのかいな。」



「あ、こーぞーさん。いらっしゃいませ。」


「いつものでええですか?」



「おお、つーちゃん頼むわ。」



店内でバトっているにも関わらず、いつものことだと、にこやかに応対する器の大きい店主―――緑青剣(リョクショウ ツルギ)とその妻―――緑青碑鉈(リョクショウ ヒナタ)。



そして、呆れたように店に現れたこーぞーさんと呼ばれた男―――赤根楮筬(セキネ コウゾオ)は、大阪では有名な朽霊(クチミ)会に属する……いわゆるヤクザの組長である。

会長の朽霊煎曽(クチミ センゾウ)は、歴代の大阪府警本部長と仲が良く、朽霊会が大阪府内の治安を維持する代わりに、親友である絆栄商事の社長―――金杉獣象(カナスギ ジュウゾウ)に関することや自身の組関係に対する多少のイザコザには目をつぶってもらっている。



なにせ貸す対象が、自己破産者や生活苦、多重債務者など一般の金融会社では借りられない人なので、実際にはギブアンドテイクといったところだ。



そんな警察署の体制が気に入らない殊犂は、赴任した直後から鰍掩を逮捕することに躍起になっている。



「ことりちゃん、人生は一度きりなんやで。有意義に使わなあかん。かしゅーのことは、ことりちゃん一人がどうにか出来ることやないんや。こないな無駄なことに時間かけるんはモッタイナイやろ。もっと肩の力抜いて、気楽にいこうやないか。」


「こーぞーさん、ええこと言わはるわー。さすがや。」



楮筬の重みのある言葉に涓畤壟は感動する。



「隗赫鰍掩を逮捕出来ない人生などいらない。いくら上が決めようと今は私がいる。私が変えてやる。」


「諦めわるっ。執念深い男は嫌われんでー」


「うるさい、貴様に関係ない。」

「いらっしゃいま」


「かしゅーはん、大変や!」



「きゅーちゃん、どないしたん?」



碑鉈の声を遮り、慌てて鰍掩に駆け寄った男―――厩鳬張匆(キュウゲリ チョウゾウ)は、絆栄商事から借金している一人。


前はどこかの社長だったらしいが倒産して、今は路上生活をしている。



「けんしろー君、どないもこないもないわ!金、スラれてもーたんや!」


「はぁ?どういうこっちゃ?」


「今日、利息の期限やから、払お思おてポケットに入れてたんや。やけど、女とぶっかって。今、ポケット見たらこれが。」



張匆の掌には、マジックなのか黒く塗られた五円玉が3枚。



「黒兵衞やな。」


「黒兵衞?きゅーさん、とりあえずお冷やどーぞ。」


「おおきにな、ひなちゃん。」



「黒兵衞ちゅーんは、スリの字や。この五円玉をスッた相手の懐に忍ばせんねん。語呂合わせで五黒三、自分にスラれる為に稼いでくれてご苦労さんってな。」


「今時こんなんするスリおらんで?しかもきゅーみたいな奴スるやなんて、スリの風上にも置けんわ。」



プロはお金の無いホームレスからはスラないと、楮筬は眉間に皺を寄せ嫌悪感を示す。

「ほら、ことりちゃん。お仕事やで!」


「チッ……。そのぶつかった女、どんな顔だ?服装は?」



「いや~…見たら分かるんやけど……」



本来の仕事だと言わんばかりの涓畤壟にイラつきながらも、犯人らしき女について殊犂は聞くが、張匆の返答は曖昧だ。



「いらっしゃいませ。」


「コーヒー1つ。」


「かしこまりました、お好きな席に」



「あぁーー!かしゅーはん、この女や!」


「え?」



またもや碑鉈の声を遮った張匆は、キャリーバックを持ち来店した女を指差した。



「わしの金返せ!!」


「せや!人のもん取ったらあかんで!そのキャリーバックん中にあるんやろ!」



「ちょ…、いきなり何ですか?」



掴みかかる張匆とたきつける涓畤壟に、女は驚き揉み合いになる。



「きゅー、けんしろー、落ち着き。その女は、スリなんかせーへん。」


「こーぞーはん、この女知っとんのですか?」



女の顔を見た瞬間、楮筬は苦笑し2人を女から引き離す。



「ああ。この女は飴魏蜜穿。廓念会の稼ぎ頭や。」



「廓念会だと………!」



名前に聞き覚えがあるのか、殊犂の表情が険しくなる。

「なんや、見たことある顔やと思おたら、朽霊会の赤根楮筬組長さんやんか。こんなとこで会うとは奇遇やね。」



乱れた服を整えながら先程とはうって変わり、大阪弁で挑発的に喋る女―――飴魏蜜穿(アメギ ミツバ)は、関東を中心に勢力を拡大中の暴力団廓念(クルネ)会に属する裏社会の有名人である。



「廓念会って朽霊会と因縁の…」


「目障り極まりないけど、この女だけは別格や。ハニービーって知っとるか?」


「知っとるもなにも、ネットの世界では有名ですやん。企業から情報盗んでは悪巧みを公表したり、悪い奴から慈善団体へ金を横流ししたりする天才ハッカーやろ。義賊やゆーてマスコミも盛り上がっとるあの。」


「そのハニービーが、この女や。」



「え?ほんまに…?……って、いやいやいや。こーぞーさん、担いだらあかんで?こんな女がハニービーなわけないやろ!俺は騙されへんで!」



ハニービーがメディアなどへ話題がのぼるようになったのは、ネットが普及し出した20年ぐらい前から。


目の前の蜜穿はどうみても自分と同じ年代で、ハニービーの活動開始時期においては小学生になってしまう。



涓畤壟はあり得ないと笑う。

「兄ちゃん、思い込みと決め付けで判断してもそんなんは事実やない。闇に堕ちた漆黒の天使、光を導く純白の悪魔、狂気と赤に染まる神慈悲深い優しき死神。見た目と中身が同じやとは限らん。油断しとったら痛い目みんで。」



涓畤壟を嘲笑うかの如く、かなり上から目線だ。



「それに、うちはハッカーやない。クラッカーや。間違えんといて。ちゅーか、よう分かったな、うちがハニービーやて。会合にはあんま出てへんのに。」


「チラっと見たことあったしな。それに部下から電話があったんや。肥渓のとこにガサ入ったんにブツが出てきよらんかったってな。ほんでお前さんが来た。そのキャリーバックに入っとんのやろ。持ち出したブツが。」



東京に店を構える鏨畏(タガネイ)建設、社長の肥渓邯滄(ヒタニ カンゾウ)は廓念会に属する組長の一人だ。


同じ組長同士で知り合いだが、会同士も仲が悪くいつもお互いに動向を探り合っている。



「そのキャリーバック、改めてさせてもらう。」


「はあ?あんた何なん?」



「西広警察署のお巡りさんや。」


「警察………、あ。」



警察と聞いて力が緩んだのか、キャリーバックを奪われてしまう。

「こ、これは………」


「服に、パソコンに、本。下着まであるわ。ことりちゃん、これは完全に職権乱用やで。」



キャリーバックの中身………、『ブツ』はどこにもなく、蜜穿の私用の物ばかり。



「ちょっとことりさん!女の子のカバンをいきなりひったくって中身を見るやなんて、いくら警察でも失礼やありませんか?」


「ひなー。落ち着き、な。」



殊犂へ食ってかかる碑鉈を、どうどうと剣はなだめる。



「し、失礼しました!」


「別にええけど。見られて困るようなもん入っとらんし。それよりお巡りさん、このおっちゃんの金スッた奴、早よ捕まえてあげなあかんのとちゃうの?」


「了解しました。厩鳬張匆といったな、署まで来てもらうぞ。」



「ことりちゃん、しっかりなー」



張匆を連れて殊犂は署に戻っていった。



「えらい熱心なお巡りさんやね。」



「理由知っとるやろ。あれは東京から来た警官やしな。」


「東京……なるほどなぁ。」



鏨畏建設は、大手ゼネコンを従えるデベロッパー。


しかしその実態は、薬の密売を行っているとして、厚生労働省の麻薬取締官(通称マトリ)が内偵捜査中の企業である。

その売上金は廓念会の資金源、その裏にいると噂がある代議士の活動資金にもなっているらしい。



殊犂も上司などから話を聞き、これだからヤクザはと軽蔑しており、警察官の邪魔をし市民に悪影響を与える暴力団を、大阪へ赴任して来た直後から鰍掩や楮筬を毛嫌いしているのはそのせいだ。



まぁ、この大阪でなければ警察には目の敵にされても仕方ない行為をしているのは鰍掩や楮筬も自覚があるので、殊犂のような態度をとられてもあまり強く出れないのは否めないが。



「大体、あない重いもん持って移動なんかしたないわ。うちは運び屋とちゃうし。」


「やっぱり持って来とったんか。どこや?」



「あんたなんかに教えるかいな。大阪に着いた時点で手放しとるわ。まっ、嗅覚は麻薬探知犬並に鋭いみたいやけど。」



ガサ入れ直前に東京から大阪へ蜜穿に運ばせたようだが、もう手元には無いらしい。



「それよりお姉ちゃん、コーヒー忘れんといてな。」


「あ、はい。つーちゃん、お願い。」



来店してから数十分、立ち話だったがようやく容疑も晴れ、蜜穿は席に着く。



鰍掩達しかいない店内で、特に興味津々の涓畤壟からの目線を受けながら。

それから数週間後。



「きゅーさんからお金を盗んだ黒兵衞、捕まったそうやね。」



お皿を拭きながら剣は、さっき帰ったお客達が話していた内容を涓畤壟に確かめる。



「そうなんよ、ことりちゃんが捕まえたんやと。こーぞーさんが睨んだ通り、ネット見て真似したど素人やって。」


「ネット見ただけで真似出来るやなんて凄いねー」



碑鉈は感心するが、犯罪行為なのだから、感心することではない。



「今時珍しないよ。オレオレ詐欺とかあげます詐欺とか、めっちゃ種類あんねんから。ひなちゃんも気を付けや。」


「かっきー、お前も一種の詐欺やろ。」


「うっさい、舎弟の分際で!ちゅーか、なんで今日は、かしゅー様も蜜穿様もおらんの!」



鰍掩と蜜穿を様付けし、涓畤壟にかっきーと呼ばれた女―――塘測柿蒲(トウハカ シホ)は、鰍掩御用達のハッカーだ。


蜜穿とは違い本来の意味でのハッカーだが、クラッカーとしての蜜穿をリスペクトする少し変わった女である。



「蜜穿ちゃんは分からんけど、かしゅーさんは仕事やって。もうじき帰って来るんとちゃうかな。それまでこれ食べとき。」



剣はミックスサンドを差し出した。

「それと僕やひなは、心配せんでも大丈夫やよ。対策考えとるから。」



「はひしゃく?(対策?)」


「口にものを入れて喋んなや……」



女子の欠片も無い柿蒲に、涓畤壟は幻滅だ。


元より期待していないが。



「オレオレ詐欺には、うちには息子はいてませんって。うちらには息子どころか子供もおらんけどね。」



「あげます詐欺には、受け取るにはなんや先にお金払うんやろ?やから、受け取るお金から差し引いて構わんって、ゆうたらええやんってな。」



「かしこ~よう考えたなぁ~」



柔和な見かけによらずしっかりした考えの2人に、涓畤壟は感心する。



「お客さんの会話聞いて思いついたんやんな~」


「な~」



微笑み合う2人だが、言っていることはえげつない。



「あ、詐欺には関係あれへんのやけど、けんしろー君はもしも願いが1つだけ叶うなら何を願う?」


「え~1つだけやろ~むずいなぁ~」



腕を組み真剣に悩む涓畤壟だが、そんなに重要なことでもない気がするのは気のせいだろうか。



「簡単やよ。叶えられる願いを無限大にしてってゆうたらええんよ。」


「あ~~!な~る~ほ~ど~!」

「かなりひねくれた、天の邪鬼な答えなんやけどね。」


「けどつーさん、天の邪鬼やゆーても、めっちゃ素直な願いやん!サンドも美味しいし2人ともさすがやわ~」



柿蒲も感心するが、サンド以外はやはりえげつない。



「なんやかっきー、俺は呼んどらんけど。」


「かしゅー様!これを見せたい思おたんよ!どう?」



仕事が終わったのだろう店に現れた鰍掩に、柿蒲は周りに花が咲く勢いでクルリと一回転する。


その服装は今期の流行をめいいっぱい取り入れたコーデだ。



「それ今流行りのんやね。テレビでやっとったの思い出したわ。よう似合うとるよ。」


「豚に真珠、……いや、猫に小判やな。」


「お褒めにあずかり光栄やなぁー」


「イテテ…!ちょ…、引っ張るなや!」



ニッコリと涓畤壟の頬を引っ張る柿蒲は見るからに怒っている。


誉めていないのは丸わかりなので、当然といえば当然だ。



「流行なぁ…」


「かしゅーさん、どないしはりました?」



「いや、俺はあんま流行は追わんタイプやから。みんなやっとるからゆうて流されるんは俺は好かんし。自分に必要なもんやったら、流行とか関係あれへんしな。」

「さすが兄貴やわ!こーぞーさんとおんなじぐらい深いわー」



「まっ、流行が悪いとまではゆわんから。踊らされるなゆうだけや。似合うとるんとちゃうか、馬子にも衣装で。」


「ほんまっ!やったーかしゅー様に誉められた!」



「よかったなぁ、かっきーちゃん。」



誉められているかは微妙なところだが、本人が良ければいいかと剣は思った。



「隗赫鰍掩っ!今日こそ逮捕してやるからな!それと、飴魏蜜穿っ!貴様も不正アクセス禁止法違反で……って飴魏蜜穿は?」


「蜜穿ちゃんならいませんよー」


「なら、隗赫鰍掩だけでも署まで来い!」


「お断りしますわ。任意やったら拒否出来るんやし、強制力はあれへんでしょう。」


「ぐっ……」



至極まっとうに返され、殊犂は言葉につまる。



「ことりさん、コーヒー1杯いかがですか?美味しいの入れますよ。」


「いや、仕事中なので結構だ。隗赫鰍掩、明日は必ず逮捕してやるからな!」



明日でも無理そうだが、言うだけ言って殊犂は店を出ていった。



「負け犬の遠吠え~」


「勝負はしてへんけどな。」



だが、その後のコーヒーはいつもより美味い気がした。