ちらっと視線を上げると、あたしの両肩に手を置いた涼太が鏡越しにあたしを見ながらにやりと笑っていた。その笑みを見た瞬間、あたしの頬がかっと朱色に染まる。

「は? そんなの、いらないから」

肩に置かれた涼太の手を払いのけると、彼がわざとふて腐れたみたいに唇を尖らせた。

「サユのケチ」
「ケチとか、そういう問題じゃないし。あたし、もう行くから。亜未待ってるし」

あたしはまだ赤いままの頬を涼太に見られないように俯くと、座っている椅子の横に並べていた下駄に足を通した。

そして、勢いよく立ち上がる。

立ち上がった瞬間に、片方の下駄の先が何かに引っかかって身体が前へぐらりと揺れた。

「サユ?」

つまずいてこけそうになったあたしを、涼太が抱きかかえるように支えてくれる。

涼太の制服のシャツをつかみながら顔をあげる。

「大丈夫?」とあたしに問いかけてきた彼の頬が赤かった。それに気付いたあたしの頬も、熱を帯びてかっと熱くなる。