きりに話しかけてきたのは、クラスメイトの小野寺真琴(おのでら まこと)だった。
女バス所属。背が高く、ショートカットがよく似合う美人だ。
「違うよ!……いや、そうだよ!」
「どっちなの」
「彼女になりたいわけじゃないよ!」
「“付き合って”って言ってなかった?」
どうやら一部始終を見られていたらしい。
「付き合うってのは、放課後の話で」
「放課後?」
「うん。じつは私、イケメンを探してるの。心当たりあったら紹介してくれないかな」
「イケメンを探してる……?」
「これには、深い事情がありまして」
「へぇ。吉川さん、面食いなんだ?」
「だから彼氏候補じゃないんだって……!」
ムキになるきりに、
「もっとわかりやすく説明してよ」と、真琴。
きりの話が支離滅裂なためだ。
「西条くんっていったら学年イチの有名人だよね。先週発売された雑誌の『彼氏にしたい男子高校生』百選で堂々の一位だったけど、彼女の影は一切なくてミステリアスなところも人気の秘密だって言われてる」
その通り。この高校の一年に、読者モデルをしている有名人がいる。女子たちから人気爆発中だという話を聞いたからこそ、きりは西条に目をつけたのだ。
「彼氏じゃないなら、なににしたいの?」
「それは――」
きりは机に革製の茶色いスクールバッグをおろすと、人差し指を立て、こう言った。
「部員に!」
「え?」
「だから、ほら、勧誘したくて!」
「へぇ。吉川さん、何部だっけ?」
「演劇部!」
「……演劇部」
ワンクッション遅れてきた反応に、そんな部あったの? とでも言いたげな真琴の気持ちが表れている。
「実は私、演劇部の、たった一人の新入部員なの」
「吉川さんしか入らなかったの?」
「そうなんだよね。今の三年生が卒業しちゃうと来年には廃部が決定してしまうから、全力で新入部員集めてる」
「あー、なるほど。それで西条くんか」
納得した様子で右隣の席にリュックをおろす、真琴。
女バス所属。背が高く、ショートカットがよく似合う美人だ。
「違うよ!……いや、そうだよ!」
「どっちなの」
「彼女になりたいわけじゃないよ!」
「“付き合って”って言ってなかった?」
どうやら一部始終を見られていたらしい。
「付き合うってのは、放課後の話で」
「放課後?」
「うん。じつは私、イケメンを探してるの。心当たりあったら紹介してくれないかな」
「イケメンを探してる……?」
「これには、深い事情がありまして」
「へぇ。吉川さん、面食いなんだ?」
「だから彼氏候補じゃないんだって……!」
ムキになるきりに、
「もっとわかりやすく説明してよ」と、真琴。
きりの話が支離滅裂なためだ。
「西条くんっていったら学年イチの有名人だよね。先週発売された雑誌の『彼氏にしたい男子高校生』百選で堂々の一位だったけど、彼女の影は一切なくてミステリアスなところも人気の秘密だって言われてる」
その通り。この高校の一年に、読者モデルをしている有名人がいる。女子たちから人気爆発中だという話を聞いたからこそ、きりは西条に目をつけたのだ。
「彼氏じゃないなら、なににしたいの?」
「それは――」
きりは机に革製の茶色いスクールバッグをおろすと、人差し指を立て、こう言った。
「部員に!」
「え?」
「だから、ほら、勧誘したくて!」
「へぇ。吉川さん、何部だっけ?」
「演劇部!」
「……演劇部」
ワンクッション遅れてきた反応に、そんな部あったの? とでも言いたげな真琴の気持ちが表れている。
「実は私、演劇部の、たった一人の新入部員なの」
「吉川さんしか入らなかったの?」
「そうなんだよね。今の三年生が卒業しちゃうと来年には廃部が決定してしまうから、全力で新入部員集めてる」
「あー、なるほど。それで西条くんか」
納得した様子で右隣の席にリュックをおろす、真琴。